京都ライター塾

【インタビュー】やりたいことに取り組む「余白」を手に入れる、スケジュール管理のコツとは|エッセイスト・ライター江角悠子さん

皆さんは、スケジュールをどう管理していますか?

私は、バーチカルタイプのスケジュールシートを自分で作り、週ごとに管理しています。原稿を書く時間や打ち合わせ時間がひと目でわかり、とても便利。いっぱいに埋まったスケジュール表を見て、充実感を覚えることもありました。

でも、最近「時間が足りない」と悩むように。

久しぶりの友人からの誘い、本屋さんのポスターで見かけた美術展など、急に入る予定に対応できず、やりたいことができないもどかしさを感じていました。

「どうしたら、やりたいことをやる時間ができるのだろう?」

「時間に追われていない人は、どんなスケジュール管理をしているのかな?」

そんな思いを抱えていたところ、ライター講座の課題でインタビューの機会をいただき、講師の江角悠子さんに「ライターの時間管理術」というテーマでお話を伺いました。

江角悠子さんは、さまざまな雑誌やWebメディアで執筆され、ライター塾やオンラインサロンを主宰、大学の講師も務めるなど、書くことを軸に幅広く活躍していらっしゃいます。また、プライベートでは2人のお子さんのお母さんでもあります。

さぞ忙しくされているのだろうと思いきや、

・毎日7〜8時間の睡眠は確保している

・週に書く原稿は、3,000文字の原稿を2本くらい

・毎日発行のメルマガは、1時間で書き上げている

など、意外にもゆったりとしたスケジュールでお仕事されていることがわかりました。

このインタビューでは、

・1日のスケジュール

・スケジュール管理に使っているツール

・やりたい仕事を受けられるようにする工夫

・時間管理で参考になった本

などについて、具体的にお伺いしています。

やりたいことをやるための時間を持ちたい、時間に追われずじっくり仕事に取り組みたいと思っている方に、ぜひ読んでいただきたいインタビューです。

「やりたい仕事をやるために、スケジュールに余白を作る」江角さんの1日のスケジュールをお伺いしました。

—まず、江角さんの1日のスケジュールを教えてください。

はい、取材のない日の私のスケジュールは、大体こんな感じです。

—お仕事は、どのような流れで進めていらっしゃいますか?

事務所に着いたら、まずメルマガを書きます。平日は毎日発行しているのですが、時間ができたら書こうと思っても書けないため、真っ先にやるようにしているんです。大体1時間で書き上げて配信したら、依頼された原稿を書くなど執筆に取り掛かります。午前中には、集中して頭を使いたい仕事に時間を使っていますね。

お昼は、自分で作ったお弁当を食べて、ゆっくり休憩。忙しくない時はアプリでドラマを見たりして、リフレッシュすることもあります。

午後のスタートは、13時過ぎか14時くらいから。午後は、事務的な作業やメールの返信などが中心です。打合わせも午後から入れることが多いですね。

そして、18時まで仕事をして家に帰ります。夕食づくりの担当は夫で、食事の後は家族との時間にしており、一切仕事をいれないように徹底。土日も完全にスケジュールを開けて、プライベート優先です。

寝るのも早くて、22時くらいには寝室へ。体調を整えていい仕事をするために、睡眠も大切にしたいので、大体7〜8時間寝ています。

—原稿執筆は、午前中だけなのですね。意外と短く感じますが、いかがですか?

私は、書くのが遅いので、そもそもの仕事量を少なくしています。

今週は少し多くて8,000文字くらい書きましたが、いつもなら1週間に3,000文字を2本くらいでしょうか。

以前は、毎日取材に行っていて、原稿を書く時間が取れなくなるということもありましたが、今はそういう仕事の仕方はしていません。

—仕事量を少なくしているのは、どうしてですか?

本当にやりたい仕事の依頼が来た時、スケジュールが埋まっていて受けられず、本当に悔しい思いをしたことがあったからです。

ライターを始めた当初は、依頼された仕事は断らずに全部受けていました。だから、常にスケジュールがいっぱい。この時も、やりたかった仕事が引き受けられず、余裕のないスケジュール管理をしている自分に腹が立ちました。

この悔しさから、本当にやりたいことができるように、スケジュールに「余白」を持とうと決めたんです。そこから、仕事を選んで断ることもするようになりました。

—せっかくの依頼を断るのは、勇気がいると思いますが、いかがでしたか?

勇気がいりました!最初は怖かったです。そもそも、仕事を断っていいということすら知りませんでしたから(笑)。

でも、思い切って仕事を断ると、空いたスケジュールにやりたいお仕事が飛び込んでくるということが続きました。自分でも驚くほどでしたが、おかげでお仕事の幅が広がり、改めて「余白」の大切さを実感しています。

では、時間に「余白」を持つために、江角さんはどんな方法でスケジュールを管理されているのでしょうか。具体的にお伺いしました。

江角悠子さんインタビュー

引用:江角悠子さんX  2023年の夏にお披露目された私設図書室「わたしの居場所」

—スケジュールは、何を使って管理されていますか?

マンスリータイプの手帳で管理しています。

以前は、時系列で予定を書くバーチカルタイプを使っていましたが、やめたんです。私にとって書き込んだスケジュール通りにこなせないことが、ストレスになってしまって。それでマンスリータイプに変えて3年になります。

マンスリータイプの1日の枠は小さいため、少しの予定しか書けません。でも、そもそも私が受けられる仕事のキャパが少ないので、マンスリーで把握できるくらいの仕事量でちょうどいいんです。これなら予定通りにこなせるし、程よく余白も生まれます。

—江角さんは、クルーズ旅行や私設図書室の開設など、仕事以外の予定も楽しまれていますよね。プライベートの予定は、どのタイミングでスケジューリングしていらっしゃいますか?

プライベートの予定は、仕事よりも先にいれています。

例えばこれから先だと、10月にあるオザケンのライブの予定を手帳に書いています。まだ抽選待ちで、チケットが取れるかどうかわかりませんが楽しみです。そうやってやりたいことを先に入れて、そこを避けて仕事のスケジュールを調整しています。

注:このインタビューの後、残念ながらチケットの抽選にはずれたことが判明。江角さん、がっかりされていました。

—先にプライベートの予定をいれておくのですね。そんなスケジューリングの魅力はどんなところでしょうか?

人に人生を乗っ取られないという感覚が持てるようになりました。自分で自分の人生をコントロールできているような。

仕事に忙殺されていたときに手帳を見ると、取材や打ち合せなど、人との予定しか書いていないことに気がつきました。そのとき、「私の手帳なのに、なぜ私の予定が入っていないの?」と悲しくなったんですよ。

だから、むしろ手帳には自分の楽しみの予定しか入れないかもしれない(笑)。

参考:自分の人生を取り戻す(私の手帳活用法)

江角さんのサイトを「手帳」というタグで検索すると、これまでさまざまな試行錯誤を積み重ねてこられたことがわかります。興味のある方はぜひどうぞ。

時間の使い方について、影響を受けた本はありますか?

あります!

江角悠子さんインタビュー

「エッセンシャル思考 最少の時間で成果を最大にする/グレッグマキューン著」です。

この本には、ある実業家が経営的にメリットのあるパーティーに誘われた話が紹介してありました。でもそのパーティーがある日は、娘と遊びに行く約束をしていた日。経営者なら仕事が大事なはずですから、パーティーを優先するかと思ったら、そちらを断って、娘との約束を果たしたとあったんです。娘との約束を優先したんですね。それを読んで、私もそんな選択をしたいと思ったんです。

この書籍の感想は、江角さんのサイトでコラムとして公開されています。

「エッセンシャル思考 最小の時間で成果を最大にする」読了…断ることへの考え方3段活用|京都くらしの編集室

予定通りにスケジュールをこなすには、時間内に仕事を終えることも大切です。ここからは、仕事をスムーズに進めるための工夫を教えてもらいます。

—メルマガを、毎日発行されていますね。毎朝1時間でメルマガを書き上げるコツを、教えてください。

江角悠子さんインタビュー

引用:京都くらしの編集室 メールマガジンは、平日毎日発行

メルマガのネタは常に100個くらいストックがあります。その中から選ぶので、だいたい机に座ると、すぐに書き始められます。ネタを考える時間は、特別に作っているわけではなくて、何か思いついたら自分あてにメールをする方法でストックしています。ちなみに、ワンタッチで自分にメールができる「Captio」というツールが使いやすくて、おすすめです。

さらに、メルマガの内容をブログやInstagramに展開したり、もっとふくらませてZINEにまとめたりもしています。メルマガで書くことをベースにして、自分の発信を広げています。

—原稿の執筆に集中する工夫も教えていただけますか?

ポモドーロタイマー(25分集中して、5分休憩するタイムスケジュールを繰返す)のアプリを使っています。パソコンでも使えるアプリ「Be Focused」がお気に入りです。

他にも、タイマー作動中はTwitterを見ようとしても表示されないようにするアプリも使ったことがありますよ。

集中力はすぐに途切れてしまうので、いろいろ工夫しています。

インタビュー後記

書くことを中心にさまざまなお仕事をされ、プライベートも楽しんでいらっしゃる江角さん。分刻みのスケジュールなのかと思いきや、意外にもゆったりしたスケジュール管理で驚きました。

大切にされているのは「余白」を作ること。やりたい仕事を選び、やりたいことに時間を使って、自分の人生を生きることを意識されています。「時間がない」と悩んでいる方はきっとたくさんいらっしゃると思います。私もそのひとり。でも、本当にやりたいことは何だろう?と自分に問いかけ、優先順位をつける勇気を持って、スケジュール管理を見直したいと感じました。

今回のインタビューで伺ったことの中には、今すぐ実践できることもたくさんあります。ひとつでも取り入れてみてはいかがでしょうか?きっと明るく前向きな気持ちで、仕事やキャリアに向き合うことができるようになるはずです!

江角悠子さんプロフィール

江角悠子さんインタビュー

1976年生まれ、京都在住のエッセイスト・ライター

2006年からフリーライターとして活動。ananや婦人画報などの人気雑誌、Webなどに多数連載する。京都のお出かけ情報やレトロ建築、育児をテーマとしたエッセイも執筆。ライターを育成する「京都ライター塾」を主宰するほか、大学で非常勤講師として編集技術を教えるなど、講師業にも注力。

公式サイト:京都暮らしの編集室

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X(Twitter):@ezu1030

Instagram:@yuko_ezumi

note:エッセイスト・ライター、ときどき大学講師 江角悠子

インタビュー実施:2023年8月

この記事は、受講している「京都ライター塾アドバンスコース」の課題として、講師の江角悠子さんにインタビューした内容をまとめたものです。

zoomによるインタビュー、約1時間。事前にお送りした約10個の質問を元に、じっくりお話を伺い、記事にまとめました。

ABOUT ME
北裕実
水彩イラストレーター・ライター|広島県在住|1976年生まれ 都市計画コンサルタント、ウェディングプランナーを経て、フリーライターに。 2021年から水彩イラストの技法を習得したことをきっかけに、イラストレーターとしての活動をスタート。美味しい食べ物や季節の草花のイラストに文章を組み合わせたイラストルポを描いています。2024年春には東広島市西条公会堂にて初個展を開催。個人では、ZINE「暮らしのおいしいものイラスト帖」や「ごはんとおやつ イラスト絵日記」を発行。