東広島市の安芸津(あきつ)は、小さな港町。江戸時代には、広島藩のお米がこの港に集まり、船で出荷されていったそう。そんな背景から酒造が盛んになり、今でもおいしい日本酒を醸す蔵がいくつかあります。
先日、お気に入りの蔵に日本酒を買いに行った帰り、素敵なコーヒー屋さんに出会いました。
自家焙煎の本格的なコーヒー店「安芸津歳實コーヒー」に出会う
お店の名前は、「安芸津歳實コーヒー」(あきつとしざねコーヒー)。
昔からある建物をリノベーションしたような、洗練された雰囲気。お店の前にある赤い看板にひかれて、ふらりと立ち寄りました。
通りから見える場所にコーヒーの焙煎器が置いてあり、棚にはコーヒー豆が入ったガラス瓶がずらりと並んでいます。思いがけず、本格的なコーヒー屋さんに出会えて、旅に出たかのようなワクワクした気持ちになりました。
40代後半になっても、初めてのお店はちょっと緊張します。若者向けのお店かな?なんて思いつつ一歩入ると、渋いおじさま店主と目が合いました。焙煎家の歳實さんです。ラフなデニムに白シャツがカッコいい!
「奥のテーブルは、コーヒー教室なんかのワークショップで使うんですよ。飲んでいきます?」と声をかけてもらって、コーヒーをいただくことにしました。
今田酒造の仕込み水で淹れる味わい深いコーヒーをいただく
まずお水をどうぞ、と出してもらったのは、さっきお酒を買った今田酒造の仕込み水。仕込み水は一般の人には提供されていないので、ファンの私には、とても貴重!うれしい!味わって飲んだからか、柔らかくて甘みがあるような気がしました。コーヒーもこのお水で淹れてくれるそう。これは楽しみです!
コーヒーの好みを聞かれたので、「酸味少なめで」とお願いしました。選んでくださったのは「マンデリン」という銘柄。私は初めてでしたが、4日前に焙煎したばかりで、今日ちょうどいい感じなんだそう。ゆっくりと淹れてくださる間に、このお店のことを聞かせてもらいました。
安芸津ににぎわいを!と開いたお店だった
歳實さんは、長く勤めていた仕事をリタイアしてご実家である安芸津に戻り、さびれていくこのまちに賑わいを取り戻したい、と自家焙煎のお店を開いたそうです。コーヒーの焙煎については、いちから学んだと聞いて驚きました。
お店のつくりが独特で、手前にレジや焙煎器があり、間仕切りのようになっているコーヒーの陳列棚の奥には、大きなテーブルがある広い土間になっています。その奥はお住まいのようでした。町屋みたいなつくり!
土間では、コーヒーを飲んでもらったりコーヒーセミナーを開いたりするするそう。いろんな使い方ができる場所があるって、なんかいいよねって思いながら、コーヒーを待ちました。
初めて飲んだマンデリンは、スッキリして、軽やかな味わいで、とてもおいしい!こんなふうにゆっくりコーヒーを味わったのは久しぶりかも。癒された・・・!
ちなみに、歳實さんのおすすめは「モカ」だそう。あ〜、モカは酸味があって苦手なんよねーと思った私の気持ちが顔に出たのか「いや、僕のはね、酸味が嫌な感じじゃないんよ、ちょっと飲んでみて」と味見をさせてもらうことに。
んー!確かにえぐみのない酸味!「美味しいです」と伝えたら、「でしょう!」とにこにこされました。初めて訪れたお店なのに、こんなおしゃべりができることもうれしいな。
お店のリノベーションは西日本豪雨の復旧で学生さんと設計
帰ってから、建物の設計はどなたがされたんだろう?と検索したら、意外なエピソードを発見。
コーヒーのお店を開いてしばらくして、西日本豪雨災害がおき、このお店も被災してしまったそう。そんなとき、ボランティアに来ていた当時建築学生だった若い建築士さんが改修を申し出てくれて意気投合し、このお店が出来上がったらしいです。素敵ですよね、学生さんが力を貸してくれることも、若い学生さんに改修を託すという決断も。
建築士さんは、今は独立して事務所を構えておられる、林恭正さん。この建物は、林さんのデビュー作でもあり、先日、世界最大の建築メディア「Arch Daily」にも掲載されたらしいです。きっと、お店の人もまちの人も嬉しかったんじゃないかなぁ。
こちらのお店に行ったのは、2023年の春頃。秋になって、このお店でアートイベントがあると知り、また行ってきました。その時には、設計した林さんにもお会いでき、貴重なお話を聞くことができました。その話は、また書きまーす。
おいしい思い出を、水彩イラストに描きました!
お店の情報
店名 | 安芸津歳實コーヒー |
営業時間 | 10:00~18:00 |
定休日 | 月曜日 |
駐車場 | お店の向かいに数台分あり |
住所 | 広島県東広島市安芸津町三津3572-1 |
SNS | Instagram @ toshizanecoffee |