これまで、エッセイを書くことには興味のなかった商業ライターの私。でも先日、気持ちを言葉にするエッセイの技術を学び、読者の心に響く記事作りのヒントをもらいました。
気持ちを表現する奥深さや、記事に取り入れる効果について紹介します。
講座の概要
私が現在受講している「京都ライター塾アドバンスコース」は、ライター・エッセイストの江角悠子さんが主宰するオンライン講座です。第5回のテーマは、ゲスト講師の寒竹泉美さんによる「エッセイの書き方」。
7名の受講者は、「自分の気持ち」をテーマにエッセイを書き、事前に提出します。講義の前半は、エッセイとは何か、エッセイで大切な「気持ちを言葉にする方法」を聞き、後半は受講者7名のエッセイに対するフィードバックを全員で聞くという流れでした。
商業ライターがエッセイを学ぶと、と仕事の幅が広がる
冒頭に、江角さんから「商業ライターがエッセイを学ぶ意義」について、説明がありました。
“第三者の視点から書く商業記事と、自分の気持ちを書くエッセイは、同じ書く仕事でも全く違う技術を使います。しかし、効果的に「気持ち」を盛り込んだ商業記事が、読者に響くことがあります。どちらの技術も使いこなせると、仕事の幅が広がるので、ふだん第三者の視点で記事を書くライターこそエッセイの書き方を学んでほしいと思い、このテーマを選びました。”
ふだん、私が仕事で書く記事は、集客や販促などマーケティングを目的としていることがほとんどです。商業記事には書き手の主観は不要とは言え、客観的な情報だけでは、読者に「買いたい」「行ってみたい」と思われるのは難しいと悩んでいました。ですが、このお話を聞いて、「エッセイ」が何かのヒントになりそうだと感じました。
公の情報で伝える方法と、個人の感情で伝える方法を使い分ける
ここからは、寒竹さんの講義です。
まず、情報の伝え方には「公の情報」を使う方法と「個人の感情」を使う方法の2種類がある、というお話がありました。
公の情報
機能やスペックなど客観的な情報のこと。ニュースや商業記事に使われ、情報自体に興味のある人に読んでもらいやすい。
個人の感情
嬉しい、悲しい、など書き手の気持ち。情報自体に興味がない人にも読んでもらいやすい。エッセイやブランド広告などに当てはまる。
先ほどの江角さんの話とも重なります。
客観的な情報だけでは、他の記事との差別化が難しくオリジナリティも出しにくい。でも、書き手の感情が加われば、他の記事にはない魅力となりそうです。読者に響く記事を書くには、どう感情を盛り込んだらいいのか、とても興味を持ちました。
エッセイとは「気持ちの動きを伝える文章」
そもそも、この講義を受けるまで、私は「エッセイ」について深く考えたことがありませんでした。読んだことがあるのは、著名人の書く日常のエピソードばかり。そのため、宿題のエッセイもどう書いたらいいのかずいぶん悩みました。
講義の中で、寒竹さんは「エッセイ」を、次のように定義しています。
“エッセイは、自分の心がどんなふうに動いたのかを伝える文章。無名の人が書く文章であっても、丁寧に気持ちを観察して言葉にすれば、似たような感情や葛藤を感じた人に響く、おもしろいエッセイになります。 “
つまり、エッセイを書くには「気持ちを言語化する」ことがポイントになるようです。でも、SEO記事をメインの仕事にしている私は、普段の仕事で「気持ち」や「主観」は出さないことを求められるせいか、いざ気持ちを言葉にと言われても、ほとんど言葉が出てきません。
どのように気持ちを言葉にしたらいいのか、次のステップで詳しく教えてもらいました。
気持ちを言葉にするには、よく観察することが大切
気持ちを言語化することは、意外に難しい、と寒竹さんは言います。
“表情や声色があるコミュニケーションと違って、文字だけで感情を伝えなくてはいけない。「おいしい」という文字だけでは、おいしいものを食べて嬉しいのか、亡き母の味を思い出して悲しいのか、わからない。気持ちを言語化するだけで、その状況の解像度が上がる。”
「おいしい」に悲しい気持ちが込められることがあるのかとびっくりしましたが、確かに言われるとおりです。自分でも気持ちがわかっていないことも多いと続けられ、言葉にできなくても大丈夫なのかとホッとしました。
寒竹さんは、気持ちの言語化を次の3つのステップで進めると話されます。
“・状況をありありと想像する
・自分の気分をよく観察する
・ぴったり合う言葉を探す“
気持ちを書くときは、その時にタイムスリップしたつもりで、状況を思い出すのだそうです。気持ちを表す言葉は、一つでなくてもいいので、さまざまな候補を挙げて考えてみましょう、と言われました。
また、一見気持ちを表しているようで、実はそうではない表現もあるので注意を、との一言もありました。
涙を流す、体が震えるといった体の状態を表すものや、美しい、おいしそうと言った対象を描写する言葉、「いいね」などのセリフは、気持ちを表していないそう。この説明だけではピンときませんでしたが、この後の添削で、その意味がわかります。
添削からわかる「気持ち」を書く難しさ
後半では、受講生7人が提出したエッセイの添削を、画面を見ながら解説してもらいます。他の受講生の添削も見せてもらうことで、より深く学ぶことができました。
私のエッセイについては、「商業記事としてはいいけど、エッセイとしては気持ちがほとんど感じられない」という講評をいただきました。うーん、商業ライターとしては嬉しいけれど、受講生としては嬉しくない評価。
私が驚いたのは、自分が考えていた「気持ちの表現」ができていないと指摘されたところです。
(どんな気持ち?)と指摘されている部分は、気持ちを表しているようでそうではない代表例だそう。いいアイデアだと思って、ほっとしたのか、やる気が出たのか、嬉しいのか、どんな気持ちなのかを知りたい、と指摘されました。確かに「具体的な気持ち」が書いてあれば、よりはっきりと気持ちが伝わります。講義で何度か繰り返された、「気持ちの解像度が上がる」とは、こういうことなのかもしれません。
気持ちの言語化ができれば、商業記事やインタビューはもっと魅力的になる
今回の講義を通じて、客観的な情報でまとめる商業記事であっても、少し書き手の気持ちが入ることで、読者の共感や感動を得られるのではないかと感じました。
効果的に「気持ち」を伝えるには、自分の気持ちをしっかり観察し、言葉にする技術も必要なのではないか、そのために、今回学んだ「エッセイの技術」が役立つのでは?と、何かヒントになりそうなものをいただいた気持ちです。
第三者の視点でまとめられた客観的な情報は、何かを検索する人や悩みを解決したい人にとって価値ある情報です。でも、そこに気持ちや感情といった情緒的な価値が加わることで、読者が自然に「行ってみたい」「買ってみたい」と行動できる記事になるような気がします。商業ライターとして記事を書くとき、気持ちや感情もさり気なく取り込んで、より「読みたい」と思われる記事を目指したいです。
■講師プロフィール
ゲスト講師・寒竹泉美(かんちく いずみ)さんプロフィール
京都在住の小説家・ライター。脳科学を専攻した医学博士。研究室や理系企業の専門分野をわかりやすく伝えるライターでありながら、小説家としても活動。エッセイや文芸の講師経験も豊富。
私が受講した江角悠子さんの「京都ライター塾アドバンスコース」は、2023年10月31日から第3期がスタート。
講座のプログラムや日時、費用などの詳細は、江角さんのブログ「第3期京都ライター塾【アドバンスコース】の受講生を募集中です!」の記事からご覧ください。
申し込み締め切りは、10月29日(日)23:59だそう。
ちなみに、直前にzoomで講座について質問できる無料相談会があるそうです。
10月29日(日)13時〜14時 お問い合わせを。